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| 1.石綿の定義 石綿にはいろいろな繊維状鉱物のうち工業的に使用されてきた鉱物群の総称であり 、 石綿障害予防規則及びその施工通達では 、 次のように定義している。 「 石綿の種類には 、 アクチノライト 、 アモサイト ( 茶石綿 ) 、 アンソフィライト 、 クリソタイル ( 白石綿 ) 、 クロシドライト ( 青石綿 ) 及びトレモライトがあること 」 ( 石綿障害予防規則及びその施工通達 : 基発第0318003号 ) ILO ( 1986 ) の石綿の定義は次の様である。 「 ” 石綿 ” とは 、 蛇紋石族造岩鉱物に属す繊維状けい酸塩鉱物であるクリソタイル ( 白石綿 ) 及び角閃石族造岩鉱物に属す繊維状けい酸塩鉱物であるアクチノライト 、 アモサイト 、 ( 茶石綿 、 カミングトナイト―グリュネライト ) 、 アンソフィライト 、 クロシドライト 、 あるいはそれらの一つ以上を含む混合物をいう。 」 蛇紋石族に属しているクリソタイルは 、 ほぼすべてが繊維状を示す。 一方 、 角閃石族に属す5種類の鉱物は肉眼的にも顕微鏡的にも繊維状を示さないものがあるので 、 それらのうち繊維状のものを石綿としている。たとえば、WHOやILO等の公的機関は 、 顕微鏡レベルで長さと幅の比が3以上のアスペクト比をもつ ” 繊維状 ” のものを石綿と定義している。 つまり 、 グリュネ閃石のうち繊維状のものがアモサイト 、 リーベック閃石のうち繊維状のものがクロシドライトである。 アンソフィライト 、 トレモライト 、 アクチノライトも繊維状のものが石綿である。 それらの石綿名を鉱物名と区別するために 、 繊維状アンソフィライト ( fibrous anthophyllite ) あるいはアンソフィライト石綿 ( anthophyllite asbestos ) と呼んでいる。 トレモライト 、 アクチノライトも同様にトレモライト石綿 、 アクチノライト石綿などと呼んで鉱物名と区別する。 |
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2.石綿の種類 そうした石綿には 、 表 2-1 の様に蛇紋石族と角閃石族の6種類の鉱物が含まれる。 この他 、 幾つかの鉱物も石綿と呼ばれて利用されていた。 例えば 、 中国では最近まで繊維状ブルーサイト ( 水滑石 ) やセピオライト(海泡石)を石綿として使用していた。 しかし 、 現在では繊維状ブルーサイトやセピオライトは石綿ではないかとされ 、 WHOやILO 、 および各国の公的機関は 、 石綿の種類を 表 2-1 の6種類に限定している。 石綿障害予防規則およびその行政指導通達でも 、 表 2-1 と同じ6種類を石綿としている。 |
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| 表 2-1 石綿の分類 : 石綿名と鉱物名 、 科学組成式 、 CAS No. など | |||||||
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| 鉱 物 名 | 石 綿 名 | 化 学 組 成 式 | |||||
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| 蛇 紋 石 族 Serpentines |
クリソタイル ( chrysotile ) |
クリソタイル ( 温石綿 chrysotile ) |
Mg3Si2O5(OH)4 12001-29-5* |
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| 角 閃 石 族 Amphiboles |
グリュネ閃石 ( grunerite ) |
アモサイト ( 褐石綿 amosite ) |
(Mg,Fe)7Si8O22(OH)2 12172-73-5* |
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| リーベック閃石 ( 曹閃石 riebeckite ) |
クロシドライト ( 青石綿 crocidolite ) |
Na2Fe32+Fe23+Si8O22(OH)2 12001-28-4* |
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| アンソフィライト ( 直閃石 anthophyllite ) |
アンソフィライト石綿 ( fibrous anthophyllite ) |
Mg7Si8O22(OH)2 77536-67-5* |
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| トレモライト ( 透閃石 tremolite ) |
トレモライト石綿 ( fibrous anthophyllite ) |
Ca2Mg5Si8O22(OH)2 77536-68-6* |
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| アクチノライト ( 陽起石 actinolite ) |
アクチノライト石綿 ( fibrous sctinolite ) |
Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2 77536-66-4* |
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| * : CAS No. ( Chemical Abstracts Number ) | |||||||
| 表 2-1 にあるように 、 石綿は 、 まず蛇紋石族石綿と角閃石族石綿に大別される。 蛇紋石族石綿はクリソタイル1種類のみである。 今まで世界で使われた石綿の9割以上がこの蛇紋石族石綿のクリソタイルである。 角閃石族石綿には5種類ある。 実際に大量に使用された石綿はそのうちアモサイトとクロシドライトである。 アンソフィライト石綿やトレモライト石綿は一部の地域で使用されたことがある。 アモサイトは肉眼的には褐色から灰色を呈することが多く 、 現場では褐石綿あるいは茶石綿と呼ばれ比較的頻繁に使われた角閃石族石綿である。 青石綿と呼ばれるクロシドライトは 、 青色を呈するのが特徴で 、 青色を目印にすると肉眼で判定しやすい。 クロシドライトは 、 極めて優れた物性を持つが 、 発がん性などの有害性も強い石綿である。 アモサイトとクロシドライトは 、 吹付け石綿として過去に大量に使われたが 、 日本では昭和50年以降吹付け石綿は原則禁止された。 また 、 平成7年 (1995年) には 、 輸入 ・ 使用が原則禁止となった。 トレモライトとアクチノライトは 、 同じ結晶構造を持ち 、 化学成分の鉄分の多少で区別されている。 鉄分の少ないのがトレモライトとアクチノライトと呼ばれる。 実際には 、 鉄分の多少を分析するのは煩難なので 、 両者を一括して 「 トレモライト/アクチノライト系石綿 」 と表現することが多い。 トレモライトとアクチノライトは 、 いずれも蛇紋岩中に存在することが多く 、 クリソタイルやタルクあるいはバーミキュライトといった鉱物に不純物として認められる場合もあるので 、 注意が必要である。 |
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| 3.石綿の物性 |
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| 石綿が産業界で貴重な材料として盛んに使われた理由は 、下記のような優れた性質を一種類の物質がすべて兼ね備えていることにある。 ( 1 ) 木綿や羊毛と見間違うほどにしなやかで糸や布に織れる ( 紡織性 ) ( 2 ) 引張りに強い ( 抗張力 ) ( 3 ) 摩擦・磨耗に強い ( 耐摩擦性 ) ( 4 ) 燃えないで高熱に耐える ( 耐熱性 ) ( 5 ) 説や音を遮断する ( 断熱 ・ 防音性 ) ( 6 ) 薬品に強い ( 耐薬品性 ) ( 7 ) 電気を通しにくい ( 絶縁性 ) ( 8 ) 細菌・湿気に強い ( 耐腐食性 ) ( 9 ) 比表面積が大きく、他の物質との密着性に優れている ( 親和性 ) (10) 安価である ( 経済性 ) このような特徴は石綿以外の単一の天然鉱物や人工物質にほとんど見られないことから 、 石綿は「 奇跡の鉱物 」と呼ばれる事がある。 表2-2に石綿の物理的 ・ 化学的特性を示す。 |
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| 石 綿 種 | 蛇 紋 石 群 Serpentine group |
角 閃 石 群 Anphibole group |
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| 白石綿 ・ 温石綿 クリソタイル Chrysotile |
青 石 綿 クロシドライト Crocidolite |
茶 石 綿 アモサイト Amosaite |
直 閃 石 アンソフィライト Anthophyllite |
透 角 閃 石 トレモライト Tremolite |
緑 閃 石 アクチノライト Actinolite |
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| 化学構造式 | Mg6Si4O10(OH)8 | Na(Fe2+>Mg)3Fe23+ Si8O22(OH)2 |
(Mg<Fe2+)7 Si8O22(OH)2 |
(Mg<Fe2+)7 Si8O22(OH)2 |
Ca2Mg5Si8O22(OH)8 | Ca2(Mg7Fe)5 Si8O22(OH)2 |
| 硬 度 | 2.5〜4.0 | 4 | 5.5〜6.0 | 5.5〜6.0 | 5.5 | 6 |
| 比 重 | 2.55 | 3.37 | 3.43 | 2.85〜3.1 | 2.9〜3.2 | 3.0〜3.2 |
| 比 熱 (kcal/g/℃) | 0.266 | 0.201 | 0.193 | 0.210 | 0.212 | 0.217 |
| 抗 張 力 (kg/cu) | 31,000 | 35,000 | 25,000 | 24,000 | 5,000未満 | 5,000未満 |
| 非 抵 抗 (MΩp) | 0.003〜0.15 | 0.2〜0.5 | 500未満 | 2.5〜7.5 | ― | ― |
| 柔 軟 性 | 優 | 優 | 良 | 良〜不良 | 良〜不良 | 良〜不良 |
| 表面電荷(ゼータ電位) | + | - | - | - | - | - |
| 耐 酸 性 | 劣 | 優 | 良 | 優 | 優 | 良 |
| 耐 ア ル カ リ 性 | 優 | 優 | 優 | 優 | 優 | 優 |
| 脱構造水温度 (℃)* | 550〜700 | 400〜600 | 600〜850 | 600〜850 | 950〜1,040 | 450〜1,080 |
| 耐 熱 性 | 良,450℃位からもろくなる | クリソタイルと同様 | クリソタイルよりやや良 | アモサイトと同様 | クリソタイルより良 | 不良 |
| 注) ※空気中 | ||||||
| 石綿繊維は 、 粉砕したときに縦に裂ける傾向があり 、 高いアスペクト比を保ったまま次々に細かい繊維になる。 こういった細かい繊維は、 人の鼻毛や気管 ・ 気管支の繊毛を通り越して肺胞にまで到達しやすく 、 吸入されやすい繊維の代表でもある。 クロシドライトとアモサイトは 、 クリソタイルよりしなやかさが低く、 まっすぐで堅い (stiff, haesh) 繊維の傾向がある。 しかし 、 特にクロシドライトは 、 しなやかさこそクリソタイルに負けるものの 、 それ以外の石綿の優れた性質をすべて完璧に持っている最高性能の石綿である。 |
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| アスベストは、強度を備えた微細な繊維構造を持つため、重さに比べて非常に大きな表面積をもつという特性を活かし、石綿スレート、石綿けい酸カルシウム板、ビニールタイル等の建築資材の繊維素材として使用されてきた。
( 図2-1参照 ) 石綿はその9割以上が建材製品にしようされており、押出成型セメント板 、住宅屋根用化粧スレート、繊維強化セメント板 、窯業用サイディング、石綿セメント円筒に加工され 、建築物の壁材 、屋根材 、外装材 、内装材等にしようされている。 建築材以外では、ジョイントシートやシール材に加工され 、化学プラント等の配管や機器のガスケット、漏洩防止用のグランドパッキンに広範に使用されているほか 、耐熱 ・ 電気絶縁板やエスカレーターのブレーキ等の産業用磨耗材等に使用されている。 また 、自動車のブレーキ ・ ライニングやクラッチ ・ フェーシング等の摩擦材及び潤滑材の繊維素材 、並びに接着材 、ペイント等の補填材に使われている。 さらに 、アスベストは 、断熱 、絶縁性に優れ 、酸 、アルカリにも強いため 、電線の被覆材 、機械、器具の断熱材 、ガスケット 、シーリング材 、フィルター類や電解装置の中の隔膜などに利用されてきた。 アスベストの利用形態は 、これらを含め 、3000種以上あるといわれているが 、平成8年度のわが国におけるアスベストの用途別使用量は 、輸入されたアスベストの約93%が建築資材の原料として、残りがその他の一般材料として使用されている。 |
![]() 図 2-1 石綿製品の種類と用途 |
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| 5.石綿の人体への有害性 |
| 現在 、アスベスト暴露に関連あるとして確認されている疾病は 、石綿肺 、肺がん 、悪性中皮腫の3疾患に加え 、良性胸膜疾患として 、胸膜炎 、びまん性胸膜肥厚 、円形無気肺 ( または無気肺性偽腫瘍 ) 及び胸膜プラークがある。 これらはいずれも空気中に浮遊するアスベストを吸入することにより発生する。
(1) 石綿肺 (2) 肺がん (3)
悪性中皮腫 (4) 良性胸膜疾患 |
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